青色申告者が事業を手伝ってもらっている生計一の家族に給与を支払っても、そのままでは必要経費にはなりません。
支払った給与を必要経費にするためには、一定の期限までに届出書を税務署長に提出する必要があります。
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家族に支払った給与の取扱い
原則
生計一(生計が同じであること)親族に支払う対価は、給与を含めてすべて必要経費にはなりません。
一方、親族でも別生計の親族に支払った対価で事業に関するものは、すべて必要経費になります。
青色申告者の場合(青色事業専従者給与)
青色申告者は、次の時期までに、一定の事項を記載した「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署長に提出することにより、生計一親族に支払った給与が必要経費になります。
なお,原則としてその年を通じて6ヶ月超従事していることが要件ですが、年の途中の開廃業・病気・婚姻・就職・退職・入学・退学などの場合は、従事可能期間の1/2を超えれば要件を満たしたことになります。
白色申告者の場合(事業専従者控除額)
白色申告者の場合は、専従者給与の届出書の提出は必要はなく、また給与の支払いがなくても一定金額を必要経費とみなされます。
なお,原則としてその年を通じて6ヶ月超従事していることが要件で、青色事業専従者給与のようなやむをえない事情は考慮されません。
【必要経費とみなされる金額】
次の金額のうち、いずれか少ない金額
- 配偶者である事業専従者…86万円
配偶者以外の事業専従者…50万円 - 従事している事業のこの規定適用前の(総収入金額ー必要経費)➗(事業専従者の数+1)
この算式の意味は、事業専従者の給与は、この規定適用前の事業者自身のもうけの半分が限度ということを意味しています。
つまり、事業専従者の給与は事業者のもうけを超えてはいけないということです。
なお、この給与とみなされた金額は、事業に従事した生計一親族(事業専従者)の給与所得になります。
青色事業専従者給与に関する届出書の書き方のポイント
提出期限
【青色事業専従者給与に関する届出書の提出期限】
- 原則…その年の3月15日まで
- その年1月16日まで不動産所得・事業所得・山林所得のいずれも行っていない者が、1月16日以後に新たに事業を開始した場合
…事業開始日から2月以内(例:4/1なら6/1) - その年1月16日以後に新たに専従者を有することになった場合
…その日から2月以内(例:4/1なら6/1)
支給額
月給と賞与の支給額の上限を記載します。
上限なので、実際に支給した金額が記載した金額よりも少なくても大丈夫です。
記載した金額を超える場合は、別途「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を提出する必要があります。
また、記載した金額の範囲内であっても、働いた職務の内容からしてあまりにも高額な金額の場合は否認される可能性がありますので注意しましょう。
使用人給与欄
生計一親族以外の従業員で、青色事業専従者と同程度の仕事に従事する人や、代表的な給与水準の人の内容を記載します。
ここは、使用人の職務の内容・給与支給額から青色事業専従者給与が不相当に高額でないかを判断する資料になります。
届出書の様式はこちらから→国税庁HP 青色事業専従者給与に関する届出手続
青色事業専従者給与に関する変更届出書を提出する場合
次の場合には、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく提出しなければなりません。
遅滞なくなので、青色事業専従者給与に関する届出書のような期限は設けられていません。
- 青色事業専従者給与の上限額に変更があった場合
- 新たに青色事業専従者が加わった場合
2人目以降の青色事業専従者が加わった場合には、青色事業専従者給与に関する届出書を従事開始日から2月以内に提出するのではなく、青色事業専従者給与に関する変更届出書を出すだけなので、提出が少しくらい遅れても大丈夫です。
なお、青色事業専従者給与に関する届出書と青色事業専従者給与に関する変更届出書は同じ用紙です。
使う方のタイトルを◯で囲むか、使わない方のタイトルに横線を引いて使えば結構です。
青色事業専従者給与・事業専従者控除額の注意点
配偶者控除・扶養控除との併用はできない
青色事業専従者給与及び事業専従者控除額を使った場合には、その配偶者または扶養親族については、配偶者控除または扶養控除を使うことができません。
専ら事業に従事していること
専従者という名のとおり、専ら事業に従事していることを要件としています。
なので、すべての就業時間に従事していなければならないということはないですが、別会社で常勤で働いていたり、常勤役員であったりすると要件を満たさないことになります(非常勤役員であれば大丈夫です)。
年齢は16歳以上
専従者は、その年12月31日現在で16歳以上の者でないとなれません。
専従者が他の専従者を配偶者控除・扶養控除とすることができない
例えば、父と母を専従者としている場合で、父が母を控除対象配偶者として配偶者控除の適用を受けることはできません。
専従者に対する退職金は必要経費にならない
専従者に対する給与と賞与は必要経費として認められますが、退職金は必要経費になりません。
まとめ
青色申告者の方は、生計一の家族に給与を支払う場合、所定の手続きをすれば配偶者控除や扶養控除の適用を受ける以上の恩恵がありますので活用してみましょう。
ただし、事業に専従しているとこと、職務の内容によって不相当に高額な金額は必要経費にならないことには注意しましょう。