役員や従業員が死亡した際に支払う死亡退職金のうち、一部を弔慰金とすることにより、相続人となる遺族が納税する相続税を節税することができます。
会社としては、死亡退職金にしても弔慰金にしても全額が経費となるため納税額に影響はありませんが、遺族にとってはこれからの生活費の原資である死亡退職金から納める相続税が少しでも少なくなれば助かります。
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弔慰金の取扱い
弔慰金とは、会社などが遺族を慰めるために支払う金銭のことをいいます。
通常、弔慰金は非課税とされ相続税は課税されませんが、課税される場合もあります。
- 実質上退職金と認められる部分
- 上記以外の金額のうち次の金額を超える部分
①業務上の死亡の場合…死亡時の普通給与の3年分
②業務上の死亡以外の場合…死亡時の普通給与の半年分
まず、退職金を名目だけ弔慰金に変えたものは退職金として相続税の課税対象になります。
次に、実質的に弔慰金のものでも、死亡時の給与により決めた金額までなら非課税ですが、それを超える部分は退職金として相続税の課税対象になります。
死亡時の給与の3年分又は半年分を基準として計算する方法は、基準が明確なので迷うところはないですが、実質上退職金と認められる部分の金額の判断は非常に難しいです。
相続税法基本通達には次のようにあります。
相続税法基本通達3-19 退職手当金等の判定
被相続人の死亡により相続人その他の者が受ける金品が退職手当金等に該当するかどうかは、当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合においてはこれにより、その他の場合においては当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、又は受けると認められる額等を勘案して判定するものとする。
要約すると、「弔慰金が退職金規程などにより定められている場合は弔慰金とします。そうでない場合は、亡くなった方の地位や功労、類似業種の同じような地位の人が支払いを受ける金額をもとに判定しますよ。」と言うことになります。
これは他の税法でもよく出てくるのですが、類似業種の金額をベースとして高額どうか判定するというのが一番困ります。
税務署は申告法人のデータからその数字を把握しているのでしょうが、それは公開されているものではありませんので、我々税理士でも分からないのです。
まとめ
実務上は、退職金規程に弔慰金の支給基準を決めておいた上で、死亡時の給与の3年分又は半年分を非課税として相続税を計算することになるでしょう。
税務調査では、従業員の弔慰金でもめることはないでしょうが、代表者の弔慰金の場合、あまりに高額ですと退職金とされる可能性はあります。