平成28年12月22日に平成29年度税制改正大綱が閣議決定されました。
今回は、中小法人に関係する項目を中心にかんたんにまとめていきます。
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中小企業の租税特別措置の所得制限
資本金1億円以下の中小企業向けの各租税特別措置については、平成31年4月1日以後に開始する事業年度からは、過去3年の平均所得が15億円を超える事業年度については適用されなくなります。
これは、資本金が1億円を超えていた大法人が、減資等をすることにより資本金を1億円以下にして、中小企業特例の恩恵を受けるケースが出てきていることに対する措置だと考えられます。
中小企業向けの租税特別措置とは主に資本金1億円以下に法人に適用される次のものが挙げられます。
- 中小企業の研究開発税制
- 所得金額年800万円以下の部分の法人税軽減税率
- 交際費等のうち経費として認められる年800万円以下の部分の金額
- 貸倒引当金の損金算入
- 取得価額30万円未満の少額減価償却資産の損金算入(即時償却)
- 欠損金の繰越控除の特例(資本金1億円以下の法人は欠損金の使用制限がない)
- 中小企業等の欠損金の繰戻還付
- 中小企業投資促進税制
- 特定同族会社の留保金課税の不適用措置など
※税制大綱には具体的な租税特別措置が書かれていませんので、今後変わる可能性もあります。
役員給与
定期同額給与
税金と社会保険料が徴収された後の金額が同額である場合も、含まれることになりました。
事前確定届出給与
所定の時期に確定した数の株式や新株予約権を交付する給与が追加されます。
利益連動給与
- 算定指標の範囲に、株式や売上高の状況を示す指標を追加
- 指標の期間が、翌事業年度以後や将来の期間の指標を使うことが可能
- 株式や新株予約権が利益連動給与の範囲に追加
上記の改正は、新株予約権にかかる部分については平成29年10月1日から、それ以外については平生29年4月1日から適用されます。
中小企業経営強化税制
青色申告書を提出する中小企業者等で、経営力向上計画の認定を受けたものが、平成29年4月1日から平成31年3月31日までに、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアで、特定経営力向上設備等に該当するものを取得して事業供用した場合には、即時償却または税額控除(取得価額の7%または10%)のどちらかを選択することができます。
経営力向上計画については、こちらをご覧ください。
所得拡大促進税制
中小企業者の場合
平均給与等支給額(当期末現在の継続雇用者に対する当期の平均支給給与額)が、比較平均給与等支給額(当期末現在の継続雇用者に対する前期の平均支給給与額)に比べて2%以上増加した場合には、現行の雇用者給与等支給増加額の10%相当額に加えて、(当期の雇用者給与等支給額ー前期の雇用者給与等支給額)×12%が上乗せされます。
中小企業者以外の場合
まず、現行の「平均給与等支給額>比較平均給与等支給額」という要件にかえて、「平均給与等支給額が比較平均給与等支給額に比べて2%以上増加した場合」という要件にかわります。
控除税額は、現行の雇用者給与等支給増加額の10%相当額に加えて、(当期の雇用者給与等支給額ー前期の雇用者給与等支給額)×2%が上乗せされます。
研究開発税制
- 試験研究費の範囲に、”対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用”が追加
- 中小企業技術基盤強化税制は、試験研究費の増加割合が5%を超える場合、税額控除率は「税額控除率(12%)+(増加割合ー5%)×0.3(税額控除率の上限は17%)」となります(2年間の時限措置)。
営業権の償却方法
営業権の償却方法が、今までの期割(月数や日数に関係なく事業年度の数で割る)から、月割計算で行うことになります。
その他の項目
異動後の納税地の所轄税務署長に異動届の提出が不要
納税地に異動が合った場合に提出する異動届は、異動前の所轄税務署長に提出するだけでよくなります。
登記事項証明書の添付が不要に
法人設立届出書等に、登記事項証明書を添付する必要がなくなります。
まとめ
今回は平成29年度税制改正大綱の法人課税関係の改正項目のうち、中小法人に関係しそうなところに絞って、簡単に要点だけを整理してみました。
各項目の細かいポイントについては、今後の税制改正の動きを見ながら個別に記事にしていきます。
平成29年度税制改正大綱の記事はこちらにもあります。