平成28年12月22日に平成29年度税制改正大綱が閣議決定されました。
今回は、その中でも個人所得課税を中心にかんたんにまとめていきます。
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配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し
今回の改正の中でも注目度の高い項目でしたが、結果として低所得者にとっては減税、高額所得者にとっては増税となりました。
いわゆる103万円の壁が150万円の壁になったわけですが、社会保険の扶養に入るための130万円の壁は依然として存在しますので、今後は130万円(月額108,334円以上)の壁が問題になるかもしれません。
なお、この改正は平成30年分の所得税(住民税は平成31年度)から適用されます。
配偶者控除の見直し
- 配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入で103万円)というのは従来のまま
- 納税者の合計所得金額が900万円(給与収入で1,120万円)以下の場合は、控除額は以前のまま
- 納税者の合計所得金額が900万円(給与収入で1,120万円)を超え、1,000万円(給与収入で1,220万円)以下の場合、控除額は段階的に下がる
- 納税者の合計所得金額が1,000万円(給与収入で1,220万円)を超えると、配偶者控除の適用がなくなるようになった
配偶者特別控除の見直し
- (改正前)配偶者の合計所得金額が38万円(給与収入で103万円)超76万円(給与収入で141万円)以下
(改正後)配偶者の合計所得金額が38万円(給与収入で103万円)超123万円(給与収入で2,014,287円)以下 - 配偶者の合計所得金額が38万円(給与収入で103万円)超85万円(給与収入で150万円)以下の場合、配偶者控除の控除額と同額の控除を受けられる
- 納税者の合計所得金額が900万円(給与収入で1,120万円)を超え、1,000万円(給与収入で1,220万円)以下の場合、控除額は段階的に下がる
- 納税者の合計所得金額が1,000万円(給与収入で1,220万円)を超えると、配偶者特別控除の適用がなくなるのは従来と同じ
積立NISAの創設
累積投資口座に投資をした場合、年間の投資額40万円を上限に20年間(非課税枠は40万円×20年=最大800万円)は、累積投資勘定に係る公募等株式投資信託の配当等と公募等株式投資信託の受益権の譲渡益については,所得税及び個人住民税は非課税になります。
現行の「年間投資上限120万円、非課税保有期間5年」のNISAとは、どちらか選択適用になります。
なお、投資可能期間は平成30年から平成49年までの20年間となっています。
住宅の耐久性向上改修工事を行った場合の税額控除の拡充
特定の増改築等を行った場合の税額控除の対象となる工事に、一定の耐久性向上改修工事が加わることになりました。
なお、適用時期は、増改築等をした居住用家屋を平成29年4月1日から平成33年12月31日までの間に、その納税者自身が居住した場合について適用されます。
特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の 控除額に係る特例
特定の増改築等に係る住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除の対象となる工事に、特定の省エネ改修工事と併せて行う「一定の耐久性向上改修工事」が追加されます。
また、税額控除率2%の対象となる住宅借入金等の範囲に,特定の省エネ改修工事と併せて行う「一定の耐久性向上改修工事」の費用に相当する住宅借入金等が追加されます。
既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除の対象となる工事に、「一定の耐久性向上改修工事」で耐震改修工事 又は省エネ改修工事と併せて行うものが追加されます。
控除額も、耐震改修工事又は省エネ改修工事に係る標準的な工事費用相当額に、耐久性向上改修工事に係る標準的な工事費用相当額を加えた合計額の10%相当額となります。
一定の耐久性向上改修工事とは
①小屋裏、②外壁、③浴室、脱衣室、④土台、軸組等、⑤床下、⑥基礎若しくは⑦地盤に関する劣化対策工事又は⑧給排水管若しくは給湯管に関する維持管理若しくは更新を容易にするための工事で、認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくものであることなど一定の要件を満たすものをいいます。
医療費控除とセルフメディケーション税制の添付書類の変更
医療費控除又はセルフメディケーション税制の適用受ける場合には、現行の医療費の領収書に代えて、医療費の明細書または医薬品購入費の明細書を確定申告書に添付することになります。
ただし、税務署長は確定申告期限から5年間は、その医療費の領収書または医薬品購入の領収書の提示または提出を求めることができるとあるので、領収書は捨てずに保管しておく必要があります。
なお、この改正は、平成29年分の所得税の確定申告から適用されますが、経過措置として平成29年分から平成31年分までの確定申告については、従来どおりの領収書の添付でもかまいません。
一定の届出書の提出不要
- 納税地の変更に関する届出書を、変更後の納税地の所轄税務署長に提出する必要なし
- 納税地の異動に関する届出書を、異動後の納税地の所轄税務署長に提出する必要なし
- 個人事業の開業・廃業等届出書を、その個人の納税地の所轄税務署長以外の税務署長に提出する必要なし
- 給与支払事務所等の移転届出書を、その移転後の給与支払事務所等の所在地 の所轄税務署長に提出する必要なし
まとめ
今回は平成29年度税制改正大綱の個人所得課税の改正項目のうち、比較的重要性の高いものや実務で関わってきそうなところに絞って、簡単に要点だけを整理してみました。
各項目の細かいポイントについては、今後の税制改正の動きを見ながら個別に記事にしていきます。
平成29年度税制改正大綱の記事はこちらにもあります。