上場株式等の配当所得については、総合課税、申告分離課税、申告不要制度の3つの課税方式を選択することができます。
どの課税方式を選択するかによって、税金だけでなく、国民健康保険料や保育料などの面でも影響が出ますので、課税方式の選択はよく考えて行いましょう。
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配当所得の課税方式はこの3つ
配当所得の課税方式は総合課税、申告分離課税、申告不要制度の3つです。
- 総合課税・・・他の総合課税の所得(利子所得、不動産所得、事業所得、給与所得、総合譲渡所得、雑所得、一時所得)と合算されて、超過累進税率(税率が階段状に上がっていきます)で課税される方式
- 申告分離課税・・・総合所得の所得とは合算せず、所得税15.315%、住民税5%が源泉徴収されて完結する方法で、上場株式等の譲渡損とは損益通算できる方式で、上場株式等の配当のみ適用
- 申告不要制度・・・配当による収入は源泉徴収されているので、申告しなくてもいいという制度。これを選択すると所得金額の合計額には加算されないが、源泉徴収された税金も取り戻すことはできない
ただし、配当の種類のよっては、選択できる課税方式は限定されます。
- 非上場株式の配当や持株割合5%以上の上場株式の配当
…配当が年10万円以下の場合は総合課税と申告不要制度が選択でき、それ以外は総合課税のみ - 持株割合5%未満の上場株式の配当
…総合課税、申告分離課税、申告不要制度を選択できる
課税方式の選択は所得税と住民税で別々の課税方式を選択できる
意外と知られていないのが、所得税と住民税で異なる課税方式を選択できることです。
ただし、平成28年度現在では自治体によって対応はマチマチで、大阪市のようにHPで公表されている自治体もあれば、公表していない自治体もあり、公表していないからできないとうことでもありません。
できるかできないかは自治体に直接問い合わせる必要がありますが、平成29年度税制改正でこのことが明確化される予定で、平成29年度からはどの自治体でも可能になります。
この所得税と住民税で異なる課税方式を選択できるようになると、おいしいとこ取りができます。
総合課税を選択するケース
総合課税を選択するケースは他の総合課税となる所得がそれほど多くないケースです。
他の総合課税となる所得が多いと超過累進税率で高い税率となり、それなら申告分離課税や申告不要制度を選択すれば上場株式等の配当の場合、所得税と住民税あわせて20.315%の税率(非上場株式の配当は20.42%の所得税のみ)で済みますから、総合課税を選択する必要はありません。
平成27年分以後の所得税額速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | ー |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
上記の速算表により計算した所得税と、復興特別所得税(所得税額の2.1%)と住民税の10%との合計が、申告分離課税や申告不要制度の20.315%以下であれば総合課税が有利となります。
ところが総合課税を選択すると、配当所得の金額の10%の所得税と2,8%の住民税の税額控除を受けられます(課税所得金額が1,000万円を超えると半分になります)。
とうことは、上記の速算表に当てはめてみると、税率23%の区分である課税所得金額900万円以下までであれば、(23%−10%)+(23%−10%)×2.1%+(10%ー2.8%)=20.473% > 20.315%となり、これでは申告分離課税や申告不要制度を選択したほうがいいことになります。
そこで先ほど紹介した所得税と住民税で別々の課税方式を選択する方法を使うわけです。
税率23%の区分で、所得税は総合課税、住民税は申告不要制度を選択したとします。
(23%−10%)+(23%−10%)×2.1% + 5%= 18.273% < 20.315% となり、所得税で申告分離課税や申告不要制度をするよりも税負担は軽くなります。
さらに、住民税で申告不要制度を選択すると、国民健康保険料や保育料なども増えないので、税金以外のメリットもあります。
なお、この住民税で所得税と違う課税方式を選択する場合には、納税通知書が送達される6月上旬までに、市町村に住民税の確定申告書を提出する必要があります。
また、自治体によっては、申告書に所得税とは異なり申告不要制度を選択する旨を記載したりして、何らかの意思表示を求めるケースもあるようです。
まとめ
課税所得金額が900万円以下であれば、上場株式等の配当については所得税で総合課税を、住民税で申告不要を選択すれば、最も有利な結果になります。
配当の金額が大きければ大きいほど効果がありますので、上場株式等の配当が多い方は検討してみましょう。
なお、非上場株式の配当についても同様のことができますが、非上場株式の配当は1銘柄につき年間10万円以下でなければ申告不要制度を選択できないので、あまり大きな効果はありません。
上場株式等の譲渡所得についても同様の規定がありますので、次の記事を参考にしてみてください。