平成28年7月1日から「中小企業等経営強化法」が施行され、その中で「経営力向上計画」が新しく設けられました。
経営力向上計画が認定されれば、目玉である固定資産税の半減のほか、政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用 保証、債務保証等の資金調達に関する支援などの金融支援も受けることができます。
今回は、この制度の概略を簡単にまとめてみました。
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経営力向上計画とは
経営力向上計画とは、人材育成や財務管理、設備投資など自社の経営力を向上するために実施する計画で、認定されると税制や金融の支援等を受けることができます。
手続き
認定を受けるには、一定の事項を記載した申請書その他の書類を事業分野ごとの担当省庁に提出する必要があります。
- 申請書(原本・写し)
- チェックシート
- 工業会等による証明書(固定資産税の軽減を受ける場合のみ)
- 返信用封筒(A4サイズの認定書を折らずに返送可能なものなので角2封筒でいけます)
申請書
申請書はPDFのほかWord、Excelでも様式が公開されていますが、記載ミスが多発していることから、プルダウンやエラー表示のでるExcel版の使用が推奨されています。
なお、このExcel版の申請書様式は経済産業局に提出する業種用のものですので、他の担当省庁に提出する場合には、それぞれの担当省庁の様式をご使用ください。
また、平成29年3月15日からは新様式の計画申請書になっています。
申請書記載例はこちらをご参照ください→申請書記載例
※(2019年1月21日更新)
提出期限
固定資産税の軽減を受ける場合には、原則として、その資産の取得までに計画の認定を受ける必要がありますが、認定前の取得でも、取得日から60日以内に経営力向上計画が受理されれば、認定前の取得でも固定資産税の軽減を受けることができます。
この場合の受理とは、認定の1つ前の段階のことで、申請しても書類の不備があった場合には受理されていませんので、手続きは余裕をもってすすめる必要があります。
また、固定資産税の軽減を受ける場合には、12月31日までに認定を受ける必要があります。
もし、12月31日までに認定を受けられないと軽減を受けられる年が1年減りますので注意しましょう。
※受理から認定までは最大30日または45日(複数の事業分野がある場合)かかります。
提出先
提出先は事業分野によって異なります。
詳しくはこちらのを事業分野と提出先(Excel)ご覧ください。
なお、複数の事業分野にまたがる場合には、いずれかの事業分野の担当省庁に提出すればよいことになっています。
固定資産税の軽減措置
経営力向上計画の認定を受けた事業者は、平成28年7月1日〜平成31年3月31日までの間に、対象となる機械及び装置を取得した場合には、最大3年間、その機械及び装置の固定資産税が半減します。
対象者
- 常時使用する従業員数1,000人以下の個人事業主
- 資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下の法人で、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
- 出資を有しない法人で、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
※1つの大規模法人(資本金1億円超の法人など)に発行済株式総数の1/2以上を所有されている法人、複数の大規模法人に発行済株式総数の2/3以上を所有されている法人を除きます。
対象資産
機械及び装置で次の要件のすべてを満たす資産が対象になります。
- 販売開始から10年以内のもの
- 生産性1%以上向上のもの
- 取得価額160万円以上のもの
- 中古資産でないこと
※平成29年度税制改正で対象資産が拡充される予定です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
手続き
経営力向上計画の申請の際は、申請書と一緒に工業会等の証明書を添付する必要があります。
償却資産の申告の際には、償却資産申告書に上記の申請書の写しと証明書の写しを添付します。
担当省庁に提出する前に申請書と証明書のコピーは忘れずにとっておきましょう。
なお、固定資産税の軽減措置の対象となる設備の追加取得をした場合は、変更認定の申請をする必要があり、その変更認定の申請書に工業会等の証明書を添付することになります。
各種金融支援
経営力向上計画の認定を受けた場合、政策金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証などの次の金融支援を受けることができます。
- 商工中金による低利融資
- 中小企業信用保険法の特例
…信用保証協会の別枠の追加保証や保証枠の拡大が受けられます。 - 中小企業投資育成株式会社法の特例
- 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
…国内親会社の海外支店や海外現地法人が、海外の政策公庫提携金融機関から融資を受ける場合に債務の保証をしてくれます。 - 日本政策金融公庫による低利子融資
- 中小企業基盤整備機構による債務保証
- 食品流通構造改善促進機構による債務保証
さいごに
経営力向上計画について簡単にまとめてみましたが、各項目の個別の詳しい内容は、また別記事で書く予定にしています。
経営力向上計画は、減税という点で固定資産税の軽減に目が行きがちですが、資金調達関連の金融支援も見逃せないポイントです。
固定資産税の軽減は、機械及び装置に限られているという点で利用できる事業者は限られますが、金融支援は対象事業者も多くなります。
また、平成29年度税制改正大綱でも、経営力向上計画の認定を受けた事業者向けの特別償却または税額控除制度が創設されており、対象資産も機械及び装置だけでなく、器具及び備品、建物附属設備、ソフトウェアも含まれています。
この機に経営力向上計画の認定を受けることを検討してみてはいかがでしょうか?
なお、計画作成に際しては、経営革新等支援機関のサポートを受けて作成することもできます。
当事務所も経営革新等支援機関ですので、ご検討の際はお問い合わせください。