経営セーフティ共済は掛金全額が税務上の費用になるとともに、取引先の倒産があった場合には掛金総額の10倍までの貸付けを受けることができます。
節税以外のメリットもありますので検討してみましょう。
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経営セーフティ共済とは
経営セーフティ共済は中小企業倒産防止共済ともいわれ、本来の目的は取引先の倒産により資金繰りが苦しくなったときの資金調達です。
ところが、「払った掛金の全部が経費になる」、「一定期間加入すれば解約しても掛金が戻ってくる」というメリットもあることから節税メインで加入される事業者も少なくないです。
加入要件
次の1,2の要件のどちらも満たす事業者が加入することができます。
- 引き続き1年以上事業を行っていること
…開業年度や設立期は加入できませんが、個人事業者から法人成りした場合には個人事業開始日から1年以上であれば加入できます。 - 次のいずれかに該当する中小企業者
①資本金要件または従業員数要件を満たす会社または個人事業者②企業組合、協業組合
③事業協同組合、事業協同小組合または商工組合で、共同生産、共同販売等の共同事業を行っている組合…上記に該当しない医療法人やNPO法人などは対象となりません。
掛金
毎月5,000円から200,000円の範囲内で設定でき、増額や減額(一定の要件があります)、掛金の前払いである前納もできます。
ただし、掛金総額が800万円に達したら、それ以上掛金を積み立てることはできません。
解約
解約すれば解約手当金が戻ってきますが、1年以内の解約の場合は1円も戻ってきません。
ただ、1年以上かければ80%は戻ってきますので、万が一解約しても大きなロスにはなりません。
共済金の貸し付け
取引先の倒産により債権の回収が困難になった場合には、債権の額を限度として掛金総額の10倍(8,000万円を限度)までの貸付けを受けることができます。
貸し付け条件は、無担保・無保証人・無利子で、償還期間は5年〜7年です。
ただし、貸付金の1/10に相当する掛金が積み立てた掛金総額から控除されるので、それが実質的な利息といえます。
税法上の取扱い
税法上のポイントは次のとおりです。
- 掛金の全額が経費になる
- 経費にするためには確定申告書に、法人であれば別表十(六)と適用額明細書を、個人事業者であれば任意の様式の明細書を必ず添付する必要がある
- 期末に向こう1年分を前納すれば全額が経費になる
- 個人事業者は事業所得のみで、不動産所得などでは経費にならない
- 法人の場合、解約金は雑収入として収益計上
- 個人事業者の場合、解約金は事業所得の収入金額として計上(一時所得ではない)
- 個人事業者が死亡した場合には、その被相続人の準確定申告で事業所得の収入金額に計上して所得税を計算し、相続税の計算においては、解約手当金の支給を受ける権利が相続財産になる
なお、中小企業倒産防止共済の前納掛金は短期前払費用に該当しないので、毎期継続適用が要件ではありません。
ただし、短期前払費用と同様に1年を超える前納は、その支払額のすべてが必要経費になりませんので注意が必要です。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
経営セーフティ共済のメリットをまとめると、次のようになります。
- 節税になる
- 得意先の倒産などにより債権の回収が困難になっても貸付けを受けられる
- 資金繰りに困ったときに解約しても、掛金のほとんどが返ってくる
掛金は前納もできますが手続に時間がかかりますので、少なくとも決算日から1ヶ月以上の余裕をもっておく必要があります(前納の手続きは毎年必要です)。
そのためには、出たとこ勝負の決算ではなく、早い段階での利益予想が不可欠になります。
そして早い段階での利益予想をするためには、自計化(自社で経理をする)する必要があります。