マンションなどの区分所有の不動産を保有している場合、毎月、マンション管理組合に管理費と修繕積立金を支払います。
100%居住用の場合は事業と無関係なので特に気にする必要はないですが、事業に使用している場合、この支払った管理費と修繕積立金はどのような取扱いになるのでしょうか?
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管理費の取扱い
管理費とは、マンション共用部分の管理等に要する費用として区分所有者から強制的に徴収される費用です。
法人税・所得税の取扱い
管理費はマンションの維持管理に必要な費用のため、支払った事業年度の経費として費用になります。
消費税の取扱い
法人税・所得税では経費になるというのは、必要な費用ということでイメージがつきやすいですが、消費税ではどうなるのでしょうか。
管理費をマンション管理組合に管理してもらう対価と考えれば、課税仕入れに該当しそうですが、国税庁の質疑応答事例では次のようにあります。
マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。
したがって、マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。
- 駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係るものは不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係るものは消費税の課税対象となります。
- 管理費等の収受………不課税となります。
つまり、区分所有者は組合員なので、組合員が支払う管理費はいわゆる会費として取扱うということです。
会費なので消費税は課税対象外になります。
なお、駐車場についても区分所有者が支払うものは管理費と同様に会費として課税対象外です。
ですが、マンションの駐車場に空きがあるので外部の人が借りた場合など、区分所有者以外の者が支払うものは課税仕入れに該当します。
修繕積立金の取扱い
将来の修繕のために積み立てる修繕積立金も、管理費と同様に区分所有者から強制的に徴収されるものです。
法人税・所得税の取扱い
修繕積立金は、将来行われる大規模修繕のために積み立てられるものであるため、支払ったときに修繕が行われているわけではありません。
なので原則的には、支払ったときではなく、実際に修繕が行われたときに経費として費用になります。
しかし、修繕積立金は義務的にマンション管理組合に支払わなければならないものですから、次の要件のすべてを満たす場合には、支払った事業年度の経費として構わないとされています。
- 区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払義務を負うことになること
- 管理組合は、支払を受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
- 修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
- 修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
消費税の取扱い
修繕積立金と修繕工事とは直接の対価関係になく、マンション管理組合が区分所有者から受ける修繕積立金は修繕工事の対価ではありません。
マンション管理組合を通しての間接的な取引になるので、対価性がないということになります。
したがって、修繕積立金は管理費と同様に会費と同様に取扱われるので課税対象外になります。
なお、マンション管理組合が工事業者に、積み立てた修繕積立金から支払う修繕費は、直接の対価性があるので、マンション管理組合において課税仕入れに該当します。
参考:マンション管理組合の課税関係
参考までに管理費・修繕積立金を収受するマンション管理組合の課税関係をまとめておきます。
法人税の取扱い
マンション管理組合は人格のない社団等に該当しますので、法人と同様に法人税の規定の適用を受けます。
一般に法人税法では収益事業にのみ法人税が課税され、非収益事業には課税されません。
マンション管理組合が、組合員である区分所有者に対して行う管理や駐車場の貸付は収益事業に該当しませんので、これらの対価として徴収する管理費や修繕積立金、駐車場使用料には法人税が課税されません。
ただし、区分所有者以外の外部の者に駐車場を貸し付けた場合は、法人税が課税される場合があります。
- 空き駐車場を外部の者に貸し出した場合で、区分所有者が使用を希望したときに、外部使用者に退去を求めることができないもの
…外部使用部分だけでなく、区分所有者の使用も含め、そのすべてが収益事業になります。 - 空き駐車場を外部の者に貸し出した場合で、区分所有者が使用を希望したときに区分所有者を優先して、外部使用者に退去を求めることができるもの
…外部使用部分のみが収益事業になります。 - 空き駐車場を近隣の工事に伴い、工事業者から貸出の申し出が合った場合に、短期的に貸し出した場合
…区分所有者への使用のみならず、外部使用部分も含め、そのすべてが収益事業になりません。
消費税の取扱い
区分所有者から徴収する管理費、修繕積立金、駐車場使用料には消費税は課税されません。
外部使用者から受取る駐車場使用料は消費税の課税対象になります。
修繕工事をした場合には、その修繕費は課税仕入れに該当します。
大規模修繕工事の場合には多額の課税仕入れが生じるため、マンション管理組合が消費税の課税事業者を選択すれば、消費税の還付を受けられると思われがちです。
ところが、国や人格のない社団等に対する特例で、管理費等の課税対象外の収益に対応する課税仕入れは仕入税額控除をできないことになっていますので、還付の可能性はほとんどないでしょう。
まとめ
マンション管理組合に支払った管理費・修繕積立金・駐車場使用料の取扱いをまとめると次のようになります。
- 区分所有者がマンション管理組合に支払う、管理費・修繕積立金・駐車場使用料は経費となりますが、消費税の課税仕入れに該当しないので仕入税額控除はできません。
- 修繕積立金は原則として修繕が行われた事業年度に経費となりますが、修繕積立金の支払いがマンション管理規約に沿って適正な管理規約に従って行われている場合は、支払った事業年度の経費になります。