税務つーしん

年末調整で確認しておきたいポイント(その2)

投稿日:2016年12月8日 更新日:

年末調整

前回は年末調整で間違えやすい項目として、所得控除のうち物的控除(社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除)の確認しました。

今回は、所得控除のうち人的控除である配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除ついて確認していきます。

 

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配偶者控除

専従者は控除対象配偶者にならない

青色事業専従者や事業専従者は、事業所得や不動産所得でその給与が必要経費になっていますので、専従者は配偶者控除の対象になりません。
なお、年の途中で専従者でなくなったため年末時点で専従者でない場合でも、配偶者控除の対象にはなりません。

内縁の妻は控除対象配偶者にならない

配偶者控除は婚姻関係がないと適用がありませんので、内縁の妻は配偶者控除の対象となりません。

配偶者の所得金額は38万円まで

配偶者の所得金額は38万円以下でないと配偶者控除を受けられません(平成28年現在)。
この所得金額とは、各種所得控除額と前3年以内の繰越損失額、譲渡所得の特別控除額を差し引く前の所得金額です。

設例1
配偶偶者の収入がパート収入のみで年収103万円の場合

103万円ー65万円(給与所得控除)=38万円≦38万円 ∴配偶者控除の適用あり

設例2
配偶者のパート収入が年収103万円で、他に株式の譲渡益10万円と前年からの株式の繰越損失20万円がある場合

103万円ー65万円(給与所得控除)+10万円=48万円>38万円 ∴配偶者控除の適用なし

損失の繰越控除を差し引く前の金額で判定しますので、損失の繰越控除は考慮しません。

設例3
配偶者のパート収入が年収103万円で、他に特定口座(源泉徴収あり)の株式の譲渡益10万円と前年から株式の繰越損失20万円があるが株式の譲渡益について申告不要を選択した場合

103万円ー65万円(給与所得控除)=38万円≦38万円 ∴配偶者控除の適用あり

特定口座で源泉徴収ありの口座の場合、申告不要を選択すればその譲渡益を配偶者の所得に加算する必要はありません。
この場合、繰越損失20万円を使うことはできません。

設例4
配偶者のパート収入が年収103万円で、他に居住用財産の譲渡益100万円(居住用財産の特別控除前)

103万円ー65万円(給与所得控除)+100万円=138万円>38万円 ∴配偶者控除の適用なし

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除を使えば、譲渡所得自体は0円になりますが、配偶者控除の判定となる所得は特別控除を控除する前の金額で判定します。

年の途中で死亡した場合など

本来は12月31日の時点で配偶者でないと配偶者控除を受けられませんが、年の途中で死亡した場合や国外に出国した場合は、その死亡または出国時に配偶者であれば配偶者控除の対象となります。

配偶者と死別し、同一年中に再婚した場合

死亡した配偶者と再婚した配偶者の2人分の配偶者控除を受けることはできません。
どちらか1人のみについて配偶者控除を受けることになります。

 

配偶者特別控除

納税者の所得金額は1,000万円まで

この所得金額は、配偶者控除の対象となる配偶者の所得金額の考え方と同じで、各種所得控除額と前3年以内の繰越損失額、譲渡所得の特別控除額を差し引く前の所得金額です。

配偶者の所得金額は38万円超76万円未満

配偶者の所得は38万円超76万円未満でないと配偶者特別控除を受けられません(平成28年現在)。
この所得金額は、配偶者控除の対象となる配偶者の所得金額の考え方と同じで、各種所得控除額と前3年以内の繰越損失額、譲渡所得の特別控除額を差し引く前の所得金額です。

※平成30年からは配偶者控除と配偶者特別控除が改正されます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

扶養控除

扶養親族の所得金額は38万円まで

この所得金額は、配偶者控除の対象となる配偶者の所得金額の考え方と同じで、各種所得控除額と前3年以内の繰越損失額、譲渡所得の特別控除額を差し引く前の所得金額です。

内縁の妻の子

内縁の妻は配偶者控除の対象になりませんが、内縁の妻の子は認知しているかどうかによって変わります。

認知している → 扶養控除の対象になります
認知していない → 扶養控除の対象になりません

なお、認知届が役所に受理された年から扶養控除の適用が可能になりますが、それ以前の年に遡って扶養控除の適用を受けることはできません。

離婚した元妻(夫)に引き取られた子

養育費の大部分を送金している場合には、扶養控除の対象になります。
その場合、元妻(夫)はその子を扶養控除の対象にできませんので、取り決めをしておく方がよいでしょう。

年の途中で死亡した場合など

本来は12月31日の時点で扶養親族でないと扶養控除を受けられませんが、年の途中で死亡した場合や国外に出国した場合は、その死亡または出国時に扶養親族であれば扶養控除の対象となります。

老人扶養親族と同居老親等

老人扶養親族も同居老親等も年齢70歳以上の者が対象ですが、同居老親等はさらに次の要件が必要です。

  • 居住者またはその配偶者の父母・祖父母などの直系尊属であること
  • 居住者またはその配偶者と同居していること

なお、長期入院は同居として扱いますが、老人ホームは同居として扱いません。

 

まとめ

人的控除のうち、よく使う配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除について確認しました。

人的控除で問題となるのは、控除の対象となる配偶者や扶養親族の所得金額に要件があることです。

年内還付の場合、年末調整のときまでに配偶者や扶養親族の所得金額を把握することが難しいこともありますが、もし、年末調整のあとに配偶者や扶養親族の所得金額が超過していれば、1月中であれば年末調整のやり直しができますので、勤務先に申し出ましょう。

勤務先に言いにくい場合は、ご自身で確定申告をすることになります。

次回は、残りの人的控除である寡婦控除、障害者控除、勤労学生控除やその他の項目について解説します。

 

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