所得拡大促進税制は当初申告要件があり、最初の確定申告書に明細書を添付していないと適用を受けられません。
これは、確定申告書を提出したあとに、所得拡大促進税制の適用を受けられることがわかっても、最初に提出した確定申告書に明細書を添付していなければ適用は受けられないということです。
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所得拡大促進税制の適用要件
まず、所得拡大促進税制の3つの適用要件をおさらいしておきます。
- 雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が増加促進割合以上になっていること
- 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
- 平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること
適用要件の詳しい内容については、下記の記事をご覧ください。
雇用者給与等支給増加額は増額更正できない
通常、計算に間違いがあったことにより税金を納めすぎたときは、更正の請求という手続きによって税金の還付を受けることができます。
ただし、所得拡大促進税制の場合は、【適用年度の雇用者給与等支給額ー基準年度の雇用者給与等支給額】で計算される雇用者給与等支給増加額の計算に誤りがあったときでも、更正の請求において最初に提出した確定申告書に記載した雇用者給与等支給増加額を増加させることができません(修正申告により減少させられることはあります)。
租税特別措置法第42条12の5 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
4 第1項の規定は、確定申告書等(同項の規定により控除を受ける金額を増加させる修正申告書又は更正請求書を提出する場合には、当該修正申告書又は更正請求書を含む。)に同項の規定による控除の対象となる雇用者給与等支給増加額及びその額のうち雇用者給与等支給額から比較雇用者給与等支給額を控除した金額に達するまでの金額、控除を受ける金額並びに当該金額の計算に関する明細を記載した書類の添付がある場合に限り、適用する。この場合において、同項の規定により控除される金額の計算の基礎となる雇用者給与等支給増加額は、確定申告書等に添付された書類に記載された雇用者給与等支給増加額を限度とする。
つまり、適用年度の雇用者給与等支給増加額を少なく計算してしまうと、適用要件の判定や控除税額の計算は、最初に明細書に記載した誤った少ない金額でおこないますので、適用年度の雇用者給与等支給増加額に関する更正の請求はできないことになります。
ですので、適用年度の雇用者給与等支給増加額は間違えないようにしなければなりません。
更正の請求ができる場合
では、どういう場合なら更正の請求をできるのでしょうか?
それは雇用者給与等支給増加額以外の項目に関する更正の請求で、当初申告で明細書を添付している場合です。
雇用者給与等支給増加額がからまない適用要件2や適用要件3の内容に関する更正の請求なら可能ということになります。
雇用者給与等支給増加額があるなら明細書を添付
当初申告で、雇用者給与等支給増加額がないのなら明細書を添付する必要はありませんが、雇用者給与等支給増加額があるのなら更正の請求をできる可能性がありますので、所得拡大促進税制の適用がなくても明細書を添付しておきましょう。
具体的な例であれば、適用要件1・2を満たすけども、適用要件3を満たさないために所得拡大促進税制の適用がない場合です。
このような場合でも念のため明細書を添付しておけば、適用要件3の計算を間違えていた場合でも、更正の請求により所得拡大促進税制の適用を受けられます。
まとめ
所得拡大促進税制は明細の添付がなければ適用を受けられません。
適用の有無の判定は手間がかかるうえ、計算した結果、適用を受けられなかったという場合がありますが、雇用者給与等支給増加額がある場合は、適用がなくても念のため明細書を添付しておきましょう。
特に、控除税額の計算の基礎となる雇用者給与等支給増加額が多額の場合は注意が必要です。