「これから起業をしようと考えているけど、何からしたらいいかわからない」という方に向けて、起業から開業までの手続きを、おもに税理士の目線で解説する「起業・開業の手引書シリーズ」第5回目のテーマは開業したら開設する銀行口座の選び方です。
開業や会社を設立したら、まず銀行口座を開設しましょう。
といっても、どの銀行にしたらいいのかわかりませんよね。
今回は、開業時の銀行口座選びについて解説します。
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ネット専業銀行
新たに口座を作る場合、やはり利便性を考えるとネット専業銀行ではないでしょうか。
ネット専業銀行の特徴
- インターネットバンキングが無料
- 実店舗のある金融機関に比べて振込手数料が安い
- 口座開設のハードルが低い
- クラウド会計ソフトにデータを取り込める
- ネット専業銀行によっては税金の還付口座に指定できない
- 社会保険料の口座引き落としができない
- 日本政策金融公庫の借入金入金・返済口座に使えない
- 実店舗のある金融機関に比べると知名度が低い
- 支店名が変わっている
昨今話題のクラウド会計ソフトに取引データを取り込めるので、取引を集約すれば、会計データの作成が容易になります。
実店舗のある店舗に比べると知名度が低いというのも、比較的という意味で、現在ではネット専業銀行の知名度も上がっていますから、それほどデメリットでもありません。
また、支店名はちょっと変わった名前が多く、私の税理士事務所の場合、支店名は住信SBI銀行のブドウ支店でして、請求書をお渡しするとき少し恥ずかしい感じがします(個人的感想)。
実店舗がある金融機関
実店舗がある金融機関の特徴
- 信用がある
- 実店舗の窓口があって安心
- 同一銀行間の振込手数料やATM利用料が無料の場合がある
- 個人口座のインターネットバンキングが無料
- 税金の還付口座や
- 法人口座のインターネットバンキングが有料でそこそこ高い
- 融資を受ける場合はその金融機関の口座が必要
- 口座開設のハードルが高い
大きな特徴としては、信用と窓口があることの安心感でしょうか。
また、融資を受ける際は実店舗のある金融機関と取引することは必須なので、融資を受けるならその金融機関の口座開設は必要です。
法人の場合、ネックになるのがインターネットバンキングです。
振込をするのに窓口やATMに行かないといけないというのは、手間も時間もかかりますから、インターネットバンキングが必要なのですが、法人の場合は利用料が必ずかかりますし、振込手数料も高かったりします。
なお、インターネットバンキングを法人でも無料で利用したい場合は、ゆうちょ銀行の法人口座を作りましょう。
口座開設の手続きもカンタンですので、まず最初に売上入金用の口座を作るなら、ゆうちょ銀行がオススメです。
都市銀行か地元の金融機関か
実店舗がある金融機関に口座を開設するなら、都市銀行なのか地元の地方銀行・信用金庫・信用組合なのかという選択があります。
都市銀行だと知名度と信用度がありますので、大企業との取引や全国展開で事業を行う場合など、取引上、信用度が欠かせない場合や、ATMを頻繁に利用する場合など利便性を優先する場合は、都市銀行の口座を開設した方がいいでしょう。
一方、返済実績のない創業初期に借り入れできるのは、地元の金融機関の方が可能性が高いので、そのような創業初期であれば地方銀行や信用金庫、信用組合など、地元の金融機関の口座を開設する方がいいでしょう。
もちろん、口座がある=借り入れしやすいということはありませんが、口座があることがきっかけで融資の相談に応じてくれる可能性はあります。
個人事業の場合の注意点
すでにある口座を使う場合
個人事業者の場合、特に新しい口座を作らなくても、今お持ちの口座を使うのが一番手っ取り早いでしょう。
しかし、プライベートで使っているものと事業で使うものをごっちゃにするのはオススメしません。
やはり、事業のお金とプライベートのお金は分けておいたほうがスッキリします。
例えば、金融機関から融資を受けた場合、融資を受けたので口座に多額のお金が入っていることになりますので、事業兼プライベートの口座だと、これが自分のお金なのか借入れたお金なのかわからなくなってきます。
分けておけば、これは事業のお金で、しかも借入れているお金だと認識できますので、事業用口座とプライベートの口座は分けておきましょう。
なので、今ある口座を使う場合は、一度残高を0円にした上で、事業に関係あるものの入出金のみに使いましょう(事業主貸としての生活費の引き出しはOKです)。
屋号付き銀行口座
個人事業の場合、私のような税理士の場合など、個人名が屋号に付いているのなら、個人名の口座でも問題ないでしょう。
一方、屋号と代表者の名前が結びつかない場合は、信用度の点で問題があります。
そんな場合は、屋号付きの個人口座を作成するという方法があります。
屋号付きの口座であれば、振り込んでもらう際にあやしまれることもないでしょうから、屋号付き口座の開設を検討してみましょう。
なお、口座開設のハードルは、単なる個人名義の口座を作成するときよりも高くなり、税務署に提出した開業届や申告書、会社案内など、屋号で事業を行っていることを証明する書類が必要になり、法人口座を開設する形に近くなります。
まとめ
開業した場合の口座の開設について開設してきましたが、口座はひとつにこだわる必要はありません。
もちろん、たくさんあり過ぎても分散してしまい、管理が大変になりますが、入金用、支払用などと用途に応じて使い分けるのもひとつの方法です。
例えば、売上入金用の口座は実店舗のある金融機関の口座にして、支払用の口座は振込手数料が安いネットバンクにしたりするのもいいでしょう。
また、取引件数が多い口座はネットバンクにして、クラウド会計ソフトに取り込めば経理が格段にラクになります。
なお、記事投稿時点で、日本政策金融公庫では借入金の入金及び返済口座をネット専業銀行にすることができませんので、創業融資を日本政策金融公庫で考えている場合は、ゆうちょ銀行や実店舗のある金融機関でも口座を開設することをオススメします。
用途や実情に合わせて、検討してみましょう。