前回は、匿名組合や任意組合などの組合課税について見てきましたが、組合課税においては、組合を利用した租税回避行為を防止するための措置が設けられています。
この背景には、組合で航空機を購入して航空会社などにリースをし、その航空機リース事業から生じた損失(減価償却費や借入金利子)を各組合員に分配することにより、各組合員の所得を減らすことを目的とした節税スキームを防止したかったということがあります。
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特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例
取扱い
特定組合員(事業への関与度の低い業務執行組合員以外の組合員のことをいいます)が、任意組合などの組合事業から生じた不動産所得の損失の金額は、なかったものとみなされます。
この場合の「なかったものとみなす」というのは、その組合事業の他の所得との損益通算も、その組合員の組合事業以外の不動産所得との通算や、不動産所得以外の所得との損益通算も認められないということで、他のいかなる所得との通算もできないということを意味します。
適用除外
次の場合には、特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例は適用されません。
- 損失が不動産所得以外の所得から生じた場合(航空機の貸付は不動産所得になります)
- 任意組合の執行者など事業への関与度が高い者が有する組合事業から生じた不動産所得の損失の金額
対象となる組合契約
特定組合員等の不動産所得に係る損益通算等の特例の対象となる組合契約は、次の組合契約です。
- 民法第667条第1項に規定する組合契約(任意組合契約)
- 投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項に規定する投資事業有限責任組合契約
- 外国における上記に類する契約
所得税では匿名組合契約は含まれていませんが、これはもともと匿名組合では、組合事業に関与度合いが低い組合員が営業者から利益の分配を受けた場合には、雑所得にしかならず、雑所得の損失の金額は他の所得と損益通算できないということが要因です。
有限責任事業組合の事業に係る組合員の事業所得等の特例
取扱い
有限責任事業組合契約を締結している組合員の、その組合事業から生じた損失の金額のうち、出資金額を基に計算した調整出資金額を超える部分の金額は、その組合員の事業所得等の計算上、必要経費になりません。
この損失の金額は、その組合事業から生じた不動産所得、事業所得、山林所得の各所得の総収入金額と必要経費の額を合算して計算し、トータルで損失が出ている場合の金額をいいます。
損失を出資金額の範囲内としているのは、有限責任事業組合が、出資の金額を限度として組合の債務の弁済の責任を負う有限責任であることが関係しています。
有限責任事業組合とは
有限責任事業組合とは、有限責任事業組合契約に関する法律第2条に規定されている組合のことをいいます。
任意組合は無限責任であるのに対し、この有限責任事業組合は、出資者が有限責任で、経営への全員参加と柔軟な損益配分が認められています。
添付書類
有限責任事業組合の組合事業に係る所得がある場合には、確定申告書に次の明細書を添付しなければなりません。
国税庁HP 有限責任事業組合の組合事業に係る所得に関する計算書(PDF)
まとめ
組合課税に関係する特例について見てきました。
基本的には、組合事業を利用した節税スキームを防止するために設けられた制度ですので、組合事業で損失が生じたときに影響を及ぼすものです。