決算書を読めるようになりたい方に向けて、決算書の読み方を基礎から解説している「基礎から学べる決算書の読み方講座」。
今回は粉飾決算の見分け方について解説します。
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粉飾決算の方法
粉飾決算とは、不正な会計処理を行って虚偽の決算書を作り、株主や債権者などの利害関係者に報告することをいい、一般的には、収益を水増ししたり費用を少なく計上して利益を多く見せます。
収益を水増しする方法
収益を水増しする方法はカンタンにいうと、売上高を実際よりも多く計上する方法です。
例えば、翌期に計上されるはずの売上高を前倒で計上したり、期末に架空の売上高を計上して翌期に返品処理をしたりする方法があげられます。
費用を少なく計上する方法
一方、費用を少なく計上する方法としては、当期に計上すべき費用を翌期に先送りする方法、費用として計上すべきものを資産として計上して費用化を先送りする方法、在庫を多く計上して売上原価を少なくする方法があげられます。
粉飾決算の見分け方
売上高を多く計上した場合
売上高を実際よりも多く計上した場合は、何か資産が増えているはずです。
預金を水増ししても金融機関は残高を把握しているはずですからすぐにバレてしまいます。
また、現金を増やしても、異常に現金残高が多いのは不自然です。
なので、売掛金で架空売上を計上するのが一般的です。
そしてその売掛金が過大かどうかを判断する方法が回転期間を使う方法です。
回転期間(月) = 期末の売掛金残高 / 1ヶ月の売上高(決算書の売上高÷12ヶ月)
要するに期末の売掛金が何ヶ月分の売上高なのかということですね。
当月末〆翌月末払いの場合、売掛金の回収サイトは1ヶ月です。
この場合、期末売掛金が1ヶ月分の売上高分なら特におかしいところはありません。
期末に大きな受注があって多額の売上高が発生したという可能性もありますが、これが3ヶ月、4ヶ月になると通常の〆回収日の期間からすると、回収期間としては長いですね。
これは架空売上を計上している可能性があります。
費用を少なく計上している場合
費用を少なく計上している場合は、何か債務が少なくなっているはずです。
これも買掛金の支払期間(サイト)から見て何ヶ月分の在庫が残っているかを計算することでわかります。
回転期間(月) = 期末の買掛金残高 / 1ヶ月の仕入高(決算書の仕入高÷12ヶ月)
通常の支払サイトよりも短い場合は、仕入高の計上を先送りして利益を水増ししている可能性があります。
また、期末在庫を過大計上して売上原価を少なくする方法もよくあります。
これは在庫の回転期間を比較することによって、過大な在庫を計上しているかどうかを判断できます。
棚卸資産回転率(回) = 売上高(または売上原価) / 棚卸資産
この棚卸資産回転率が過年度と比較して著しく少なくなっている場合は、在庫の過大計上がおこなわれている可能性があります。
まとめ
- 粉飾決算は、収益を水増しする方法と費用を少なく計上する方法がある
- 月平均の売上高よりも多額の売掛金が残っている場合には、架空売上を計上している可能性がある
- 月平均の仕入高よりも少額の買掛金が残っている場合には、仕入を過少計上している可能性がある
- 棚卸資産回転率が過年度よりも少ない場合には、在庫の過大計上の可能性がある
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